【陸上】義足のジャンパー中西麻耶、パラリンピック金メダルへのワンピース (2ページ目)

  • 星野恭子●文・取材 Hoshino Kyoko
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

 多くのメダリストを見てきたジョイナー氏によれば、中西に足りないものは、「ただ信じること」だという。

「彼女は本当に厳しいトレーニングに耐えてきた。体調も悪くない。あとはただ、私の言葉を、そしてマヤ自身を信じればいいだけだ。今はまだ、迷いがある。何も考えず、ただいつも通りのジャンプをすれば、彼女はロンドン(パラリンピック)で金メダルを獲れるはずだ」

 また、より安定したジャンプを行なうために技術面で改善すべき点は、「跳ぼうとするのではなく、ただ助走の勢いのままに空中に飛び出すこと」とジョイナー氏は言う。

 具体的には、踏み切る瞬間に足を身体の真下で踏みつけ、その反発力を自然に跳躍に生かすことだ。ジョイナー氏の教えは中西も十分に理解している。

「イメージは飛行機の離陸です。でも私は踏み切りを意識しすぎて、足がどうしても身体の前に出てしまうのでブレーキになり、失速してしまうクセがあるんです」

 中西がジョイナー氏の指導を本格的に受けてからまだ2年弱。

「これまでたくさんの選手を見てきたが、こんなに短期間に、こんなにも成長した選手を、私は知らない。マヤは間違いなく世界レベル。あとはただ、それを試合で発揮するだけなんだ」

 そのために必要なのが「信じること」だという点では二人の意識は共通している。

 中西の意識と身体の動きがかみ合ったとき、結果は自ずとついてくるはずだ。パラリンピックのメダルと世界記録の塗り替えという結果が。

 ちなみに、強行出場した200mと3日に行なわれた100mで中西は僅差の2位に終わった。

 そして、8月29日に開幕するロンドンパラリンピック大会の陸上競技日本代表選手は選考委員会を経て、7月3日発表される予定になっている。

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