【陸上】名古屋から始まる野口みずきの挑戦。「ボロボロになるまで走りたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 だがまだ完全ではなかった。12月19日の全日本実業団女子駅伝を走った直後に体調を崩し、さらにその翌日に受けた検査では左足舟状骨の疲労骨折が判明したのだ。

 翌年2月には疲労骨折も完治して再び走り出し、7月のハーフマラソン出場を目指した。しかし6月に入ると左臀部に違和感を感じ、その後に肉離れと診断されてハーフマラソン復帰も無理になった。

「これでもか、これでもか」と言わんばかりの試練が野口を襲う。そんな中でも彼女を支えたのは、スタッフやチームメイト、それにずっと手紙を送ってくれたり声をかけて励ましてくれるファンの存在だった。サインを求められるだけでも気持ちは前向きになったという。

 やっと光明が差したのは11年の8月だった。肉離れの完治とともに、北京前に痛めて以来ずっと感じ続けていた左足座骨部の違和感も無くなったのだ。10月の実業団駅伝西日本大会の3区(10・2㎞)で区間賞を獲得して大阪国際女子マラソン出場を表明。ギリギリで五輪ロードへの復帰を果たせることになった。

 昨年12月18日に行なわれた全日本実業団女子駅伝。閉会式会場で野口は「チームのみんなが、ここは私たちに任せて大阪に集中してくれと言ってくれて補欠に回ったんです」と笑顔で話した。そして「これまで何度も『もうダメだ。やめよう』と思ったことがあったんです。でも、本当にやめなくて良かったですね」と言葉を続けた。

 しかし、神は大阪の前になって、再び彼女に試練を与えた。それでも彼女は、神の軽い気まぐれに過ぎないととらえるだけだった。名古屋は尾崎好美の再挑戦や、赤羽有紀子の参戦などで厳しい戦いになるのは必至だが、野口はそれを自分のエネルギーに変えようとしている。

「五輪で再びメダルを獲ることも目標だけど、最終的な夢は限界まで、自分の脚が壊れるまでやりたいというのがあるんです。本当にボロボロになるまで、頑張って走りたい」

 真剣な表情でこう話した野口。3月11日の名古屋ウィメンズマラソンは、彼女の挑戦が再びスタートする時でもある。

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