クロスカントリースキー・川除大輝、金メダルまでの道のり。北京でレジェンドから引き継いだ「エース」の称号 (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

【金メダルまでの道のり】

 川除が平昌大会から帰国後、まず取り組んだのはフォームの改善だった。平昌大会でのレースで、海外選手の動画なども参考に、フォームの改良に取り組んだ。以前は、重心がうしろに下がり上体が起きてしまうフォームだったため、上り坂で疲れやすく効率の悪さを感じていた。そこで、上体を前傾させ上り坂と平行となるようなフォームに改良すると、疲労は減り、スキー板1本に乗る時間も増してスキーをより滑らせやすくなった。

 努力の成果はすぐに表れた。2018年12月にはワールドカップで銀メダルに輝き、初の表彰台に乗る。2019年3月には世界選手権で20kmクラシカルを初制覇。新田に続き日本人2人目の快挙だった。

 その後、名門の日本大学スキー部に入部し、さらなる強化を図っていたが、2年目の2020年春、コロナ禍で休校となり、富山県に帰省。強い意志でオンライン授業と自主練習を両立させた。海外遠征にはなかなか行けない分、基礎トレーニングに励み、下半身の徹底的な強化にも取り組んだ。

 ポールを持たずに滑る練習も増やし、夏場のローラー(約50cmのスキーに似た板の前後に車輪がつき、道路でも走行可)練習もポールを使わないようにするなど実戦感覚を養った。さらに、キックが重要なので脚のバネをつけるトレーニングとして縄跳びやポールジャンプ、ジャンプスクワットなど自重によるフィジカルの強化メニューも増やした。

 国際大会の機会は限られていたが、チャンスをものにし、2021年7月には選考条件を満たし、北京大会の代表内定を決めた。
                                                                                                                         
「平昌大会からの4年間は世界選手権優勝や大学入学後に結果を出せない時期など、いろいろな経験ができました。その経験を生かして、北京では100%の実力を出せるように頑張り、平昌大会よりもいい結果を残したいです」

 そうして、自分への大きな期待をもって臨んだ北京大会で、念願の金メダルを手にした。背中をずっと追いかけてきた新田は、同じレースを集大成として走り、57分46秒7のタイムで7位だった。レジェンド、新田から若きエース、川除へと、後継者のバトンがたしかに託された。

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