クロスカントリースキー・川除大輝、金メダルまでの道のり。北京でレジェンドから引き継いだ「エース」の称号

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

【レジェンド、新田との出会い】

 生まれつき両手足の指の一部がない先天性両上肢機能障害がある川除が、クロスカントリースキーを始めたのは6歳の時だ。地域のスポーツクラブに入り、さまざまなスポーツに挑戦するなかで出会ったが、アルペンスキーと違って斜面を駆けのぼることもある競技は体力的には苦しいが、その分、結果が出たときの達成感は大きく、夢中になった。

 小学校4年だった2010年春、縁あって、合宿中の新田を訪ねる機会に恵まれた。新田はちょうどバンクーバー大会で金メダル2個を獲得したばかりで、川除はこの時、金メダルを首にかけてもらい、その重みを体感した。また、当時はまだポールを使っていた川除だったが、ポールなしで滑るスタイルもあることをアドバイスしたのも新田だった。

 世界への扉が開いたのは中学2年だった2015年2月、北海道旭川で日本初開催されたパラノルディックスキーのワールドカップだった。当時13歳の川除は新田のあと押しもあり、オープン参加がかなった。記録は公認されなかったが、世界の強豪選手たちと競り合う新田の姿を間近で見て大いに刺激を受けた。

「自分もどれだけ世界に通用するのか挑戦したい」

 以来、パラスキーの世界へと挑戦を広げると、高校のスキー部で健常者と切磋琢磨し、パラ日本代表の強化指定選手にも選ばれ、代表合宿に参加するなど、ひとつずつ経験を重ね、実力は着実に伸びた。

 そして、高校2年生の2018年には平昌パラリンピックに初出場したが、悔しい結果に終わり、新田の背中を追い、より厳しいトレーニングに励んだ。

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