村岡桃佳、北京パラリンピックで金メダル。スキーと陸上の「二刀流」で「思わぬ副産物があった」 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • photo by Paraspo/Kazuyuki Ogawa

 大会後にスキーに復帰したが、不安がなかったわけではない。夏の東京大会はコロナ禍で開催が1年延期になり、冬の北京大会までの期間はわずか半年。村岡が陸上に取り組んでいる間、フォルスターをはじめスキーのライバルたちはW杯を転戦してさらに競技力に磨きをかけ、自国開催の中国の選手も台頭していた。

 ただ、久しぶりに雪上に立ったとき、意外な発見があった。滑りの力強さを感じたのだ。最初からクロストレーニングを意識して取り組んでいたわけではなかったが、陸上で培った体幹は、結果的にスキーのターンの安定性やキレのよさにつながっていた。「スキーに向けてのトレーニングだけでは得られなかった身体の使い方や筋力が身についたと感じた。思わぬ副産物だった」と村岡。加えて、新しい世界を経験することで視野が広がり、気持ちの面でもスムーズに移行できたことも大きかった。

 今年1月、トレーニング中に転倒して右ひじの靭帯を損傷するケガを負った。そこから不屈の精神で這い上がり、「二刀流」の集大成である北京パラリンピックに間に合わせた。今大会は5種目すべてにエントリーする予定で、まずは初戦で金メダル獲得と、最高のスタートを切った。開会式前日の3日に25歳の誕生日を迎えた雪の女王は、ここからどう飛躍していくのか。そのパフォーマンスに注目が集まる。

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