妻となり母となり、競技を転向してパラリンピック出場。谷真海が明かす、招致活動からの8年間 (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 撮影●矢吹健巳photo by Yabuki Takemi

――たとえば、どんなことを応援したいですか?

「とくにスポーツ活動は応援したいですね。スポーツは目標に向けて1日1日を大事に過ごせるし、みんなで協力しあう気持ちが育めます。

 息子は保育園のクラブ活動で野球やサッカー、バスケ、水泳、陸上などいろいろ挑戦中で、先日もトライアスロン大会に出場しました。3年ほど前にも特別出場させてもらっていたのですが、その時はプールでおぼれかけるなどダントツのビリでした。『リベンジしたい』と言っていたので、今回は私も応援に力が入りましたが、結果は優勝。本人もすごく喜んでいて、いい経験になったと思います。

 私もストイックにではないですが、今も体は動かしています。朝、泳いだり、会話ができるくらいのスピードで、夫と一緒に走ったり。スポーツは家族共通の趣味なので、一緒に続けていきたいです」

――今後について、何かプランはありますか。

「まずは、久しぶりに穏やかな気持ちでお正月を迎えられそうです。ここ数年は、『もうすぐ代表選考が始まるな』とか『1年延期されて本当に開催されるかな』といろいろな思いがありましたから。

それに、年末年始は合宿など遠征中のことも多かったので、今年は東京でお正月らしい過ごし方を息子に経験させられる貴重な機会になるなと思っています。あとは紅白歌合戦の審査員にも選んでいただいたので、それも楽しみです」

――素敵なお正月になりますように! 最後に、アスリートとしての今後のビジョンについてお聞かせください。

「トライアスロン自体はゆったりと続けようと思っていますし、パラリンピックやパラスポーツの普及活動は自分ができる形で精いっぱい貢献していきたいと思っています」

スタイリスト/金子夏子 ヘアメイク/塩澤延之[mod's hair]

プロフィール
谷 真海(たに・まみ)
1982年、宮城県気仙沼市出身。早稲田大学在学中に骨肉腫により右足膝下を切断。2004年、サントリー入社。義足での陸上競技にも取り組み、2004年アテネ大会から2012年ロンドン大会まで走り幅跳びでパラリンピックに連続出場。2013年、東京2020大会招致活動の最終プレゼンテーションで「スポーツの力」を訴えるなど開催決定に貢献。同活動で出会った谷昭輝さんと2014年に結婚、2015年に長男の海杜くんを出産。2016年にトライアスロンに転向し、東京パラリンピックに出場を果たした。東京大会では日本選手団の旗手を務めた。

『パラアスリート谷 真海 切り拓くチカラ』                          

障がいクラスのパラリンピック除外、コロナ禍、開催延期……幾多の困難を乗り越え、ただひたすら「スポーツの力」を信じて走り続けたその生きざまを、2年半に及ぶ密着取材、貴重な撮り下ろし写真で解き明かすドキュメンタリー。東京パラリンピックがゴールじゃない、障がい者も健常者も生きやすい共生社会の実現に向けて私たちみんながなすべきことは? 一緒に考えるヒントが詰まった1冊。
著者:徳原 海
価格:1760円(税込)
発売日:2021年12月15日
出版社:集英社
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