車いすラグビー倉橋香衣、パラリンピックで敗戦した準決勝は「笑うことを忘れていた」 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 細野晋司●撮影 photo by Hosono Shinji

── 前回のリオ大会を制したオーストラリアとは予選と3位決定戦で2度対戦し、世界トップレベルと称されるライリー・バット選手ら相手のハイポインター(攻撃的な選手)の動きを、倉橋選手が何度も阻止したプレーが印象的でした。

「ありがとうございます。新型コロナウイルスの影響で海外チームとの試合は1年半以上できていなかったんですが、日本代表には池透暢選手や池崎大輔選手ら、ライリーたちに勝るとも劣らないハイポインターがたくさんいるので、合宿でしっかり練習できていましたし、本番で戦術どおりに各選手がプレーしたから勝ちにつながったのかなと感じています」

── 倉橋選手から見た日本代表はどんなチームでしたか?

「ふだんから先輩方が話しやすい雰囲気を作ってくれていて、若手もベテランも関係なく、みんなで言い合えるし、コミュニケーションがとれるチームです。私は率先して意見を言うタイプではないし、できれば本当にしゃべりたくないんですが(笑)。キャプテンの池選手を中心によくまとまっているチームだったと思いますね」

── パラリンピックを最後まで戦い抜いた今、車いすラグビーに対してどんな気持ちを持っていますか?

「やっぱり車いすラグビーは楽しかったです。パラリンピックにピークを合わせるコンディション調整はすごく難しいと、いろんな選手が話しているのを聞いていましたが、私もそれを実感しました。それでも、5日間ずっと『終わってほしくないな』と思っていたし、初戦が始まる前からもう一回やり直したいくらいです」

── 初めての選手村の生活で印象に残っていることは?

「なんか現実から離れた夢の国にいるみたいで、めちゃくちゃ楽しかったですね。私はよく食堂で人間観察をしていました。いろんな障害の選手がいて、外国の選手なんかはスケボーやキックボードに乗って来る人とかがいて面白かったです。脚がなかったら義足や車いす、クラッチ(杖)を使うって思っていたけど、移動手段は何でもいいんやなって思いました。自由に行動している感じが、なんか素敵やなって思いながら見ていました。

それから、選手村では選手同士が同部屋で過ごしたりするんですが、今のチームでは女子選手は私ひとりなので女性スタッフと一緒でした。海外遠征ではいつものことなんですが、パラリンピックの選手村で選手同士の部屋っていうのに憧れを持ちました(笑)」

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