車いすテニス・上地結衣が銀メダルに涙。心の支えになった親友と前日に送られてきたエール (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 車いすテニスがパラリンピックに採用された1988年ソウル大会(この時は公開競技)から、女子シングルスはオランダ勢が席巻し、「9連覇」。そのうち4つの大会で金・銀・銅と表彰台を独占している。しかし、前回のリオ大会では上地が3位に食い込み、そして東京大会ではイギリスと日本の国旗が掲揚された。

「打倒オランダ」は他国選手の重要課題でもあり、「どうやったら勝てるのか、といろんな選手と話すんです。個人競技でライバルだけど目標は同じで、とくにワイリー選手や南アフリカのモンジャニ選手とは『絶対にいつか決勝戦は自分たちで戦おうね』と話しています」と上地。今回もトップの牙城は崩せなかったが、切磋琢磨することでより成熟した世界に進化していくことだろう。

 上地は高校3年で出場したロンドン大会がパラリンピック初出場。単複ともベスト8の成績をおさめた。この大会後にテニスをやめるつもりだったが、パラリンピックで国を代表して戦う選手たちの姿に感動を覚え、継続を決意。退路を断ち、プロの車いすテニスプレーヤーの道を選んだ。2014年にはグランドスラムの全仏オープンで初優勝。この年、初めて世界ランキング1位にのぼりつめた。リオ大会では旗手を務め、銅メダル。そして東京大会では、開会式で聖火台の最終点火者をつとめるなど、パラスポーツ界の顔に成長した。

 今大会は無観客開催で、多くの人がテレビ放送やオンライン配信で結果を見守っていたが、上地は勝つこと以外にもこんな思いを持って戦っている。

「面白いな、次も観たいなと思ってもらえる試合をしたいという気持ちはいつも持っています。結果を残し続けることが、パラスポーツに興味を持ってもらえるきっかけになると思っています」

 今大会の上地の戦いぶりは、映像をとおしても多くの人の心に残るものになっただろう。

 競技最終日の4日には、大谷桃子(かんぽ生命保険)と組んだダブルスでも銅メダルを獲得。東京で経験したすべてを、3年後のパリ大会につないでいく。

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