車いすテニス・上地結衣が銀メダルに涙。心の支えになった親友と前日に送られてきたエール

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 デ グロートは前回リオ大会の3位決定戦で上地に敗れている。その悔しさを糧にこの5年間で急成長を遂げ、金メダルを獲得したチームメイト、ジェシカ・グリフィオンの引退と入れ替わるようにオランダ勢のトップに躍り出た。それからの彼女は常に安定した結果を残しており、世界をリードする存在に。上地もパラリンピックの決勝でデ グロートと戦うイメージを持ち続けてきたと言い、準決勝で2大会連続銀メダリストのアニク・ファンクート(オランダ)と対戦しリードされた場面でも、「彼女(デ グロート)と決勝で戦いたいと思ったから踏ん張れた」と振り返る。

 技術面で好調だったのは、上地が世界で勝つために磨いてきたバックハンドのトップスピンだ。強い回転をかけたボールは相手コートにバウンドして高く跳ねる。車いすテニスではラケットが届きにくくなるため有効なショットだ。それまで主流だったスライスとは身体の使い方もまったく異なるため、上地はフィジカルトレーニングで身体を作り直し、時間をかけてモノにした。準決勝でも決勝でも、ストレート、クロス、ショートクロスと打ち分け、苦しい場面で自分を助けてくれる武器になった。

 盟友、ジョーダン・ワイリー(イギリス)の存在も心の支えになった。決勝前に行なわれた3位決定戦で、前述のファンクートとのフルセットの死闘を制し、銅メダルを獲得した。ワイリーは上地がグランドスラムなどに出場するときのダブルスパートナーであり、親友でもある。

 前日に「表彰台の私の隣に並びに来てね」とエールを送られていたといい、「決勝の試合中、何度もその言葉を思い出していた」と上地。「ワイリーにとって今回が最後のパラリンピックになる。だからこそ彼女の隣に行ってあげたかったな」と話すと、また涙があふれた。

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