史上最年少でジュニア世界1位! 車いすテニス・小田凱人は「日本を背負っていく選手」 (4ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 楽天オープンの時に170cmだった身長は、この2年で伸び、175cmに。車いすに乗った状態でも上半身のしなやかさがあり、体幹を活かしたチェアワークと、リーチが長い腕から繰り出す強打で試合を構築していくことができる。加えて、「彼の持ち味は、テニスに対して一生懸命で、謙虚な点だと思います」と、小田が中学2年の時から指導する後藤智樹コーチは語る。

「もともと負けず嫌いな性格で、文句を言いながらも課題をやりきることができます。彼は、いい意味で鈍感なんですね。トルコでは経験の少ないクレーコートも、先入観を持たずに臨めました。また、もし遠征の際に運搬中のトラブルなど何らかの理由で自分のラケットやテニス車が使えなくなったとしても、すぐに切り替えて、代用の道具で戦うことができるタイプです。もちろん道具にはこだわりがあるし、大事にしていますが、その時あるもののなかでマックスを目指せるポジティブさと柔軟性、そういうスポーツ選手のセンスを持っていることが強みではないでしょうか」

 そうした小田の姿勢に惹かれ、競技費用の一部を負担する企業、ラケットやテニス車のメーカーなど周囲がサポートしてくれるようになったことも、急成長につながっている。

「コーチをはじめ、支援してくれている人たちに結果で恩返ししたい。自分はその人たちの存在に燃えるタイプなので、しっかりと責任感を持ってやっていきたいと思っています」と小田は言葉に力を込める。

 今シーズンの目標は、世界ジュニアマスターズの連覇を達成すること。そして、将来的には10代のうちにシニアで世界ランキング1位を取り、2024年のパリパラリンピックでの金メダル獲得を目指していくつもりだ。車いすテニス界の超新星は、立ち止まることなく、夢に向かって羽ばたいていく。

Profile
小田凱人(おだ ときと)
2006年5月8日生まれ、愛知県一宮市出身。9歳の時に左股関節に骨肉腫が見つかり、サッカーから車いすテニスに転向した。昨年1月末~2月にフランスで開催された18歳以下の世界ジュニアマスターズを競技歴わずか3年で制した。今年4月26日付のITF車いすテニスジュニアランキングで14歳11カ月18日の史上最年少で1位に輝いた。

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