作家が車いすテニス選手と対談して知ったリアル。書く前に聞きたかった! (4ページ目)

  • 荒木美晴●構成・文 text by Araki Miharu

―― 大谷選手は実際に試合中に車いすが壊れたことはありますか?

大谷 あります。パンクが1回で、あと腰の樹脂系ベルトが根元から折れちゃってエンジニアさんを呼んだことがあります。その場でスペアに付け替えてもらい、しのぎました。

阿部 ベルトって切れるんですか? 書く前に聞きたかった(笑)! ジャパンオープンで会場のリペアのところにも行きましたが、現場であんまり話かけると邪魔しちゃいそうなので、作業テント前を何回も通り過ぎながらチラ見して、ぐるぐる回って写真を撮って、すごい不審者だったと思います(笑)。車いすの調整を依頼する人、ただおしゃべりをして帰っていく人もいて、興味深かったです。

大谷 リペアのテントに来る7割は、お話がしたい人です(笑)。私は人使いが荒いので、何かあるとすぐエンジニアさんを連絡して、「いついつに来てください」ってお願いすることもあります(笑)。

阿部 そういう呼び出しもあるんですね! それも書きたかったな。エンジニアさんに話を聞いていると、とことん自分の力を尽くして、最高の状態にして「あげたい」、じゃなくて、「するのが自分の役目です!」みたいなかっこいい職人魂を持って働いているので、きっと選手にははっきり言ってもらったほうが嬉しいんじゃないかなって勝手ながら思います。

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Profile
阿部暁子(あべ あきこ)
岩手県出身、在住。2008年『いつまでも』でロマン大賞を受賞し、デビュー。著書には、『室町少年草子 獅子と暗躍の皇子』『戦国恋歌 眠れる覇王』『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ、『どこよりも遠い場所にいる君へ』『また君と出会う未来のために』がある。

大谷桃子(おおたに ももこ)
1995年8月24日生まれ、栃木県出身。小学3年生からテニスを始め、高校ではインターハイに出場。2016年からは車いすテニスに転向し、2020年には初めてのグランドスラムとなる全米オープンに出場。続く全仏オープンでは女子シングルス決勝に進出した。今年の全豪オープンはベスト4。東京2020パラリンピック出場を目指している。

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