作家が車いすテニス選手と対談して知ったリアル。書く前に聞きたかった!

  • 荒木美晴●構成・文 text by Araki Miharu

『パラ・スター』著者・阿部暁子×
車いすテニス・大谷桃子 対談(前編)

 車いすメーカーの新米エンジニア・山路百花と、車いすテニスプレーヤー・君島宝良。親友ふたりの葛藤と成長をそれぞれのパートで描く物語『パラ・スター』。「本の雑誌が選ぶ2020年度文庫ベストテン」で第1位に輝いた話題作だ。今回、著者の阿部暁子さんと、女子車いすテニスシングルス世界ランキング5位(6月4日現在)の大谷桃子選手のオンライン対談が実現。前編では、制作秘話や大谷選手が共感したシーン、作中に登場するエンジニアと選手のリアルな関係などについてトークが展開された。

阿部暁子さん(左)と車いすテニスプレーヤーの大谷桃子選手(右)がオンラインで対談阿部暁子さん(左)と車いすテニスプレーヤーの大谷桃子選手(右)がオンラインで対談

■「車いすに種類があるの!?」から始まった物語

―― 本日はよろしくお願いします。『パラ・スター』は<side 百花><side 宝良>の2部構成で、それぞれ車いすテニスに関わる人たちの揺れ動く心情や覚悟が繊細に描写されています。阿部さんが車いすテニスを題材に作品を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

阿部 東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まった時に、パラスポーツを題材にしたいなあと思ったのが最初のきっかけです。たまたま地元で開催されたイベントでパラ陸上の元選手の講演を聴く機会があって、その中で陸上は「レーサー」、車いすテニスも、車いすバスケットボールも、それぞれ専用の車いすを使っていることを初めて知りました。

 恥ずかしながら「車いすに種類があるの?」から出発して、競技を調べていくうちに、私はテニスが好きだったこともあって車いすテニスに行きつきました。You Tubeで観たロンドンパラリンピック男子シングルス決勝の国枝慎吾選手とステファン・ウデ選手の名勝負にも感動して、どんどんのめりこんでいきました。

―― 実際に車いすテニスを観戦したことはありますか?

阿部 作品づくりのために、2019年のジャパンオープンを取材しました。私、大谷選手のファンで、現場でも遠くから姿を観ていました。なので、今日こうしてお話できることに感動しています。

大谷 ありがとうございます。すごくうれしいです。

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