東京パラ、マラソンのメダル候補。37歳新星・永田務は「劣等感が強み」 (4ページ目)

  • 星野恭子●文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News

 腕に障害はあるが、走ることに不利に働いているとは思わず、障害があるから弱いとも思わない。「ただ、走力がないだけ」と言い切る。「自分の走りを、障害者という理由だけで見られるのは、まだそれだけの記録でしか走ることができていないから。まだまだ頑張らなきゃと思います」

 励みにするのは日々、自身が指導員として向き合う障害者施設の利用者たちだ。それぞれ不自由な体でスポーツを楽しむ姿に力をもらってきた。さらに、びわ湖毎日での快走のニュースが伝わってからは、「走る人だったんですね」「俺たちもがんばるよ」といった声を掛けられるようになったという。「互いに元気を与えあう状況になった。(自身の走りで)プラスの影響を与えられた手ごたえがある」

 東京パラのマラソンは、札幌市に移ったオリンピックとは異なり、当初の予定どおりに国立競技場発着で東京都内を巡るコースで実施される。大会最終日の9月5日なので残暑の厳しさも予想されるが、永田は夏マラソンの経験はないものの、「暑くて湿度が高い、皆が嫌う気象条件でのレースになってほしい。泥臭いレースのほうが好き」と歓迎する。

「障害を持った選手たちが持つたくさんの可能性や力を、自分の走りを通して伝えたい」――新たに生まれた目標を力に、日本一あきらめない男はさらなる高みを目指す。

Profile
永田務(ながた・つとむ)
1984年2月20日新潟県村上市生まれ。小学生から走り始め、中学・高校、陸上自衛隊高田駐屯地でも陸上部に。マラソンの自己ベストは2015年に出した2時間23分23秒。2019年から新潟県障害者交流センター指導員。新潟県身体障害者団体連合会所属。家族は妻と娘(2020年6月誕生)がいる。

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