日本が誇る世界初の新型スポーツ用義足。パラアスリートと世界に挑む (3ページ目)

  • 斎藤寿子●取材・文 Text by Saito Hisako
  • 越智貴雄●撮影 photo by Ochi Takao


 重さが海外製の約3分の1と軽量化を追求したソールは、市販の接着剤で簡単に板バネに貼り付けることができ、しっかりと固定できる機能的なものだった。選手にも好評で、同年のリオパラリンピックでは山本が使用し、再び銀メダルに輝いている。

 一方、板バネ「KATANAβ」は"土踏まず"をコンセプトに設計された。これ以前に今仙技術研究所が独自に作った板バネはローマ字の「J」のような形状をしていたが、「KATANAβ」はつま先から土踏まず部分にかけて波を打ったようなカーブ状に設計されている。走行時の接地部分を一定にすることで、地面からの反発も安定して得られ、扱いやすさを追求した。

「トップアスリートだけでなく一般の義足ユーザーも、さらには大腿義足の人も下腿義足の人も使用できる広範囲に対応したものとして開発しました」と浜田氏。海外製のものと比べると低価格のため、今もビギナー選手たちに愛用されている。

 一方、「KATANAβ」を使用するトップアスリートは出てこなかった。モニターとしてテスト走行をした髙桑からは、「とても履きやすくて歩く分にはいいのですが、走るにはちょっと違いますね......。試合で使うのは難しいです」と言われたという。

 その後、「β」の改良版「Γ(ガンマ)」を市場評価用として開発するなど何度も試行錯誤を重ねた結果、まったく新しいアイデアの下、開発されたのが「KATANAΣ」だ。

 最初に目を引くのが、板バネの先端部分に設けられた空気孔。これまでにはなかった発想で、世界初のデザインとなっている。この空気孔により軽量化だけでなく、板バネを振り出す際に生じる空気抵抗の約31%削減を実現させた。加えて空気孔を設けたことによる強度低下を防ぐため、最先端のカーボン材料の選定や積層設計が追求されている。

 髙桑が初めて試合での使用を決めたことからも、「KATANAΣ」の性能の高さがうかがい知れる。

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