パラバドミントンの若き世界女王。里見紗李奈「応援は本当に力になる」 (4ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 フィジカル面が強化されれば、自信がつき、前向きにもなる。トレーナーとアスリートは一心同体と言われるように、里見にとっても、「相談事は、思えば内部さんに一番しているかも」と言うほど頼りにしている存在だ。現在は自宅でできるメニューを考案してもらい、地道に取り組んでいる最中で、コロナ禍においても自分としっかりと向き合うことができている。
 その心の安定は、次の里見の言葉からも見てとれる。

「パラリンピックが1年延期になったことを聞いたときは、正直残念だなという気持ちでした。強豪の中国の選手なんかは若いので、この一年間でどれだけ強くなるんだろうと考えると、やっぱり怖かった。でも、ゆくゆく考えたら、私だってさらに強化した姿を1年後に見せられるんだし、とプラス思考でいるようになりました。気持ちはしっかり切り替わっていますね」

 パラバドミントンを始めて、丸3年が経った。競技面以外で当初と異なることがあるとすれば、「影響を受けていた立場」から「人に影響を与える立場」になったことだろう。中学時代の恩師たちは東京パラリンピックの観戦チケットを取り、楽しみにしているそうだ。

 また、いつも応援してくれている親友のひとりは、里見がパラバドミントンを始め、活躍する姿に刺激を受けて、高校を最後に一度辞めていたスポーツを大学進学後に再開したという。

「自分が身近な人に影響を与えられているんだと思うと、もっと頑張りたいという気持ちになる。両親、コーチ、トレーナーさん、バド仲間、友人たち......、そういう人たちの応援は本当に力になるんです。令和に入ってから、(地元の千葉が大きな被害を受けた)台風やコロナといった災害や前代未聞の出来事が起こっているので、来年、東京パラリンピックが開催されたらすごく明るいニュースになると思うんです。そのなかで自分が結果を残して、みんなに笑顔を届けたい。今は、そう思っています」

 若き世界女王が、自分と向き合いたどり着いた、新たなステージと覚悟。1年後の東京パラリンピックでは、さらにスケールアップした姿を見せてくれるに違いない。

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