パラバドミントンの若き世界女王。
里見紗李奈「応援は本当に力になる」

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 急成長を遂げ、翌年にはアジアパラ競技大会に出場するまでになった里見。日本代表では金正子ヘッドコーチをはじめとする指導者陣が、里見をいちプレーヤーとして鍛えてきた。キャリアが浅い彼女にとってはジェットコースターに乗っているかのような、目まぐるしい日々だっただろう。多くの経験が確実に成長の糧となっていく一方で、気持ちが追いつかない時もあった。「私は基本的に、自分に自信がないんです」と言うように、自分を見失いかけたこともあった。

 昨年の世界選手権の決勝では、競技を始めたころからの憧れの存在である元世界1位のスジラット・プッカム(タイ)に勝利し、初出場にして初優勝を成し遂げた。興奮と喜びの絶頂を味わったあと、「私が勝ってよかったんだろうか」と焦りが支配した。

 その後のポイントレースは身が入らず、迷いが生まれ、心が定まらなかった。そんな時に古屋貴啓コーチがくれたあるメッセージが、里見のなかで切れかけていた心のスイッチをオンにしてくれた。

『あなたがこの舞台に立てているのは、それだけ努力した証拠。僕が一緒にこの景色を見られているのも、あなたのおかげだよ』

「どうすればいいかわからなくてもがいている時に、自分を認めてもらったような気がして、すごくうれしかったです。これをきっかけに、悩んだら周りの人にちゃんと自分の言葉で相談するようになりました。自分で考え、動き出すきっかけをくれたメッセージでした」

 そしてもうひとり、里見が本音を打ち明けることができる相手がトレーナーの内部亮さんだ。競技を始めてからの知り合いだったが、2019年4月に里見の所属先が決まり環境が整ったことで、個人的にケアを依頼できるようになった。6月からフィジカルトレーニングを受け始め、周囲が見てもわかるほど、身体に変化があった。「内部さんのところでは車いすだと使える器具が限られるんですが、トレーニングはちゃんとキツイ」と笑う。

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