ゴールボール・浦田理恵が代表落ちから新境地「自分を試すチャンス」 (2ページ目)

  • 星野恭子●文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 代表落ちが決まった当初は、「すごく悔しくて、落ち込んだ」というが、「ゴールボールが好き」という原点に立ち返り、腐ることなく真摯に練習を続けた。そして3カ月後、朗報が舞い込んだ。

「もってるな、私」

 コートに立てる喜びと感謝とともにプレーした浦田は、「思った以上に動けている自分」を感じながら、培ってきた地力を存分に発揮。力強いリーダーシップとともにセンターとしての輝きを取り戻した。Bチームは最下位に終わったが、「世界のボールを受けるチャンスがもらえ、手応えもあるいい大会だった」と充実の表情でコメントした姿が印象に残る。

 改めて好プレーの要因を尋ねると、「前向きなマインドセット」と振り返った。きっかけは春の欧州遠征後に市川喬一ヘッドコーチから掛けられた「ミスを恐れるな」という言葉だったという。「見えないなかでプレーしているのだから完璧はない。完璧に近づけるよう努力すればいいだけだ」と。

 目からうろこだった。浦田はずっと、「どれだけパーフェクトに抑えるか」にこだわり、「私が失点ゼロで守らなければ」とプレーしてきた。それがセンターに課せられた役割だと信じていたからだ。また、チーム事情もあり、たとえ調子を落としても代表センターが定位置だったことで、「私がコートで結果を出さねば」と力が入り、常に周囲の評価を気にしながら、「自分本位の小さな世界で戦っていた」ことにも気づいたという。

「もっと視野を広げて仲間を信じよう」「私が抑えるから、得点はお願いね」と改めてチーム内の役割分担を意識できた。「成長とは自分が強くなるだけでなく、チーム全体の底上げが大切」とも思い、チームへの貢献の仕方も考え直した。そして、ベテランとして自身の技術や経験を後輩に惜しみなく伝え、「未来にバトンをつなぐこと」も自分の役割と自覚した。

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