車いすフェンサー藤田道宣は、無意味と言われたことを武器にして勝つ

  • 荒木美晴●文 text by Araki Miharu
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第33回 車いすフェンシング・藤田道宣
アジアパラ競技大会(2018年)

 アスリートの「覚醒の時」――。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪、そしてパラリンピックでの活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか......。筆者が思う「その時」を紹介していく――。

色々なことにチャレンジしながら強くなっている藤田道宣色々なことにチャレンジしながら強くなっている藤田道宣 車いすフェンシングは、ピストと呼ばれる装置に車いすを固定し、2名の選手が向き合って戦う。男女ともフルーレ、エペ、サーブルの3種目があり、それぞれ障害の種類や程度によって2つに分けられたクラスごとに順位を争うもので、パラリンピックでは1960年の第1回ローマ大会から正式競技として行なわれている歴史あるスポーツだ。

 より障害が重いクラス、カテゴリーBのフェンサー藤田道宣(日本オラクル)は、フルーレで世界ランキング11位、エペで同17位につけている。それぞれ日本人最上位だ。リオパラリンピックの出場を逃した悔しさをバネに猛練習を重ね、この4年間で成長を遂げてきた。

 その過程で経験した「覚醒の瞬間」――。それは2018年にインドネシア・ジャカルタで開かれたアジアパラ競技大会だ。藤田はメイン種目のフルーレで銀メダルを獲得。しかも、準決勝で"大きな壁"を乗り越えての表彰台だった。

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