「俺は最強だ!」の不屈のメンタル。国枝慎吾が2年ぶり全豪制覇で雄叫び (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


 常に、劣勢に追いやられながらの戦いだった。第1セットを奪われ、第2セットは取り返すも、第3セットはゲームカウント5−2と大きくリードを許す。

 だが、この窮地にあっても、国枝は「自分を信じていた」といった。3度までも、1ポイント落とせば敗戦の危機に追い込まれるが、そのたびに「俺は最強だ!」と心の内で......いや、時に声に出して叫んだ。

 驚異の粘りでゲームカウント6−6に追いつき、優勝の行方がタイブレークに持ち込まれた時、両者の心身の優位性は完全に逆転する。

 タイブレークの中盤から終盤では、試行錯誤の末にモノにしたバックハンドでウイナーを連発。栄光へのチャンピオンシップポイントは、勝利の味を熟知する得意のフォアで掴み取った。

 2年半ぶりのグランドスラム優勝を、周囲は「復活」と讃える。

 だが、手術以降に技術面を大きく変え、戦術的にも変革を志していた国枝は、ここを「新たなスタートライン」だと定義した。

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