「俺は最強だ!」の不屈のメンタル。国枝慎吾が2年ぶり全豪制覇で雄叫び (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


「もしかしたらこのまま、新しいフォームは完成せずにキャリアが終わるのだろうか......」

 復帰への疑念が頭をめぐる。

「打ち方を変えて、仮に痛みが消えても、それで勝てるのか? 痛みがなくても勝てなくては、意味がない」

 それらの不安も胸を塞ぐ。だがそのたびに、彼は「それではつまらない!」と顔を上げ、持ち前の克己心とプライドでコートへ向かった。

 さらにその時期に国枝は、恩師とも言える人物の門を叩いている。

 それは、メンタルトレーナーのアン・クイーン。2006年に師事しはじめ、王者のメンタリティをともに構築し、国枝が世界1位に達した時もその傍らに立っていた、かけがえのない戦友である。

 それから、10年......。再び頂点への険路を歩むなかで、国枝は「技術的にはよくなっている」と実感しつつも、「最後の最後で、自分を疑ってしまっていた」。

「どうにか変えたい」

 そう思った時に真っ先に思い浮かんだのが、かつて「俺は最強だ!」のフレーズと信念を与えてくれた、メンタルトレーナーの姿だった。

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