別大マラソンで世界新が2つ。視覚障害マラソンで日本の強化策が実る (5ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 また、夏のパラリンピックを意識して、毎年8月に開催される北海道マラソンを強化大会と位置づけ、2014年から強化指定選手たちを出場させている。レース前後の健康状態のデータを収集し、暑熱対策やレース戦略に生かす試みも続けている。2018年からは視覚障害の部も設置され、正式に表彰種目にもなり、初代チャンピオンには堀越と道下が輝いた。

 伴走者の養成も重要だ。1992年から「伴走者養成研修会」を実施して理解や普及に努めてきたほか、競技レベルが急激に向上している近年は、「世界で戦うための伴走者」の養成や強化にも力を入れている。伴走者には、選手より高い走力が不可欠なのはもちろん、陸上競技経験の少ない選手を身近に指導するコーチ役も求められる。さらには、合宿や国際大会などでは長期間生活を共にし、食事や入浴など必要なサポートも行なう。安田理事は、「伴走者には人間力も必要」と説く。

 日々の練習を支える伴走者の確保は課題だが、強化選手たちは地元で多くの伴走者や協力者からなる「チーム〇〇」を結成し、練習環境を整えている。現在のルールではパラリンピックなど国際大会では伴走者が2人まで認められているが、2人の場合は選手がメダルを獲得しても伴走者にメダルは授与されない。それでも、JBMAではアクシデントなどを想定し2人体制を敷く。伴走者たちは、「チームの代表」として責任とプライドを胸に戦う。

 個人競技でありながら、ブラインドマラソンは互いに尊敬し刺激し合って力を高める。「チーム・ジャパン」のさらなる活躍から目が離せない。

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