別大マラソンで世界新が2つ。視覚障害マラソンで日本の強化策が実る (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 T11クラスの世界新記録を樹立した井内は、自己ベストを10分以上も縮める快走で3時間12分55秒をマークした。

「(3時間)15分台を目指していたので、(世界記録は)まったく意識していなかった。びっくりした」と無心での快挙だったことを笑顔で話した。

 1989年京都府生まれの井内は、先天性の全盲でわずかに光を感じる程度で、伴走者のサポートを受けて走る。中学・高校は陸上部で中距離を中心に活躍し、大学進学などで競技から一度離れたが、再び走りはじめ、2016年にマラソンに初挑戦。仕事をしながら、滋賀の立命館大学や大阪の長居公園などの練習会で力をつけた。2019年夏に転職して練習時間を増すなど、環境の充実も急成長につながったと振り返る。

 世界記録保持者となったが、東京パラのマラソンはT11とT12を統合して実施されるため、今大会で4位に終わった井内はマラソンでの推薦内定には届かなかった。だが、「トラック種目(1500m)の選考はまだ残っている。いい記録を出して、東京大会出場を決めたい」と前を向いた。

 今年の別大でブラインドランナーたちは世界新2つを含み、女子は6名、男子は3名が自己記録を更新する快走を見せた。日本ブラインドマラソン協会(JBMA)の安田享平理事は、「どの選手も持てる力を発揮してくれた。自己ベスト更新者がこれだけ出たのは、日ごろからマラソンに真摯に向き合い、努力してきた結果」と、選手や伴走者を称えた。

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