別大マラソンで世界新が2つ。
視覚障害マラソンで日本の強化策が実る

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 25kmすぎから向かい風にあおられ、防府での失速が頭をよぎったというが、「ここで頑張らなければ」と奮起した。苦しくなる35km以降も東京パラのコース終盤の上り坂をイメージし、「ここで勝てなきゃ、東京でも勝てない」と自分に言い聞かせたという。終盤にペースアップする脚力も見せ、力強いフォームのまま歓喜のフィニッシュに飛び込んだ。

 角膜の難病で、中学2年生で右目を失明し、左目も25歳のときに視力をほぼ失った道下は、盲学校で走る楽しさを知り、2008年に初マラソンを完走。その後、どんどんタイムを伸ばし、日本ブラインドマラソン協会(JBMA)の強化指定選手にも選ばれ、視覚障害の女子マラソンが初めて採用された16年リオパラリンピックで銀メダルを獲得した。

 昨年4月のマラソン世界選手権(ロンドン)優勝で出場枠を勝ち取り、東京パラリンピックの出場もほぼ内定している。目標とする金メダルに向け、ライバル勢をけん制する意味でも、「この時期に(記録を)出せたのは大きい。(東京パラでは)もう少し攻める走りをして、もっと進化した自分を見せたい」と意気込んだ。「支えてくれる"チーム道下"の仲間たちと東京大会で最高の笑顔を」という目標に、また一歩近づいた。

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