国枝慎吾、王者感の喪失が生む探求心「答えを見つける能力は上がっている」 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • photo by SportsPressJP/AFLO

―― フィジカルもメンタルも本当にタフでないとできませんね。ちなみに、頭の中の"アイデア"はどうやって整理しているんですか?

国枝 スマホのメモ欄にアイデアを書き留めています。延々とスクロールしなきゃいけないくらい、ぶわーっと(笑)。バックハンドに関することは、とくにすごい量です。コツとか、これはイケてるとか、リオ(パラリンピック)のあとはこんな風に思ってたな、とか。打ち方も変わってきたので、使っていないものもたくさんあります。今でも都度、見直しています。

―― 20代の時に取材をさせてもらった時、「30歳からが本番ですよ」という話をされていました。今年35歳を迎えた国枝選手ですが、ピークを感じますか?

国枝 一番勝っていた2008年~12年、13~15年の時の自分と戦ったら、苦戦するでしょうけど、今の自分が勝つと思います。技術的には間違いなく成熟しているので、結構いいスコアで勝てると思う。対戦? やってみたいなぁ(笑)。あの時のレベルで今の車いすテニス界に来たら、世界ランク2位にはいられないでしょうね。まあ、ラケットも車いすも戦術も進化していますけど、それくらい周りのみんなも強くなっていますから。

―― そのライバルたちの印象はどうですか?

国枝 昨年は(世界ランク1位のグスタボ・)フェルナンデス(アルゼンチン)がグランドスラムの舞台で強かったですね(全豪・全仏・ウインブルドンで優勝)。全豪と全仏では対戦しませんでしたが、ウインブルドンの決勝で戦った時は、2セット目、3セット目の突き抜け具合はすごいな、と試合しながら思いました。それくらい、ノリに乗っていた1年だったと思います。
※世界ランキングは12月取材時のもの


―― フェルナンデス選手は南米出身らしく、サーフェスはクレーが得意な印象ですが、グラスコートでも力を発揮しましたね。

国枝 やっぱりパワーのある選手ですね。芝の抵抗がかかるところでも力強く車いすを漕げるし、パワーショットが有効なところがあるので、結構彼に合っているサーフェスなのかなと思いました。それと、芝はスライスが相当有効なのでステファン・オルソン(スウェーデン)がうまい。他の選手はそれほどアジャストしている感じはないですね。

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