「ユニバーサルリレー」って何だ?多様性を象徴する種目の魅力とは (2ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 タッチワークはURの醍醐味であり、難所でもある。一般のリレーとは異なり、性別や障がいの違いにより、助走からトップスピードに乗るまでの時間が異なる。とくに難しいのが車いす選手へのタッチだ。漕ぎはじめはゆっくりだが、一度スピードに乗ると一気に加速するのが特徴で、タッチ合わせのために急な減速や停止も難しい。

 また、姿勢も低いため、3走は体を少しかがめてタッチしなければならない。個々の走力では海外勢に及ばない日本はち密さと器用さを武器に、このタッチワークで対抗しようと合宿を重ね、精度向上に努めてきた。

「攻めた結果の失格」という無念のレースを終え、澤田は、「走りはこれまでで一番よかった。日本チームは世界で十分戦える」と自信を見せ、井谷も、「スタートからスピードに乗り、後半も失速が少なく、3走に渡せた」と手ごたえを示した。竹村は、「出だしはよく、スピードにも乗っていたが、タッチできなかった。今後の練習でがんばりたい」と話し、アンカーの生馬は「タッチを受け取れず、申し訳ない。練習では安定していたが......」と悔しさをにじませつつ、「精度をもっと高めて、東京パラリンピックで悔しさを晴らしたい」と前を向いた。

 実は少し不安もあった。5月に日本記録(48秒14)をマークした時の3走は高松佑圭(ゆか)が務めたが、今大会は直前のケガで欠場となり、竹村が起用された。竹村は4走の鈴木朋樹につなぐチームで起用されることが多く、タッチも安定していた。

 ただ、鈴木は今大会、個人種目で400mから1500mまで全5レースに出場し、疲労も心配されていた。日本パラ陸上競技連盟強化委員でUR担当の高野大樹コーチはレース後、連係の安定かスピードを取るかで「かなり悩んだ」と明かしたが、結局、短距離を専門とするスプリンターの生馬をアンカーに選んだ。

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