パラ水泳の「リトルマーメイド」は日本食好き。東京で3連覇に挑む (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 伊藤真吾/X-1●写真 photo by Ito Shingo/X-1

 当のモラーレス選手は、「最初はコーチのことが怖かったの」と振り返る。「だって、グアダルーペっていうその苗字から想像していたのは女性だったから、ビックリしちゃって。でも彼は最初に私の泳ぎを見た時に、こう予言してくれたの。『君はすごく速くなるよ。パラリンピックに行くぞ、メダルを獲れるぞ』って。ただ、その時は『パラリンピックって何?』って感じだったけど」と、笑う。

 グアダルーペコーチの指導のもと、本格的に水泳をスタートすると、周囲とのコミュニケーション力も劇的に変化していったモラーレス選手。水泳に集中するようになると、グアダルーペコーチの"予言"通り、彼女はすぐに頭角を現し、スペインを代表するスイマーへと成長した。18歳で初出場したロンドンパラリンピックは「遊び感覚」が功を奏したのか、当時の世界新記録で優勝。ただ、競技選手として成熟したなか迎えたリオの時は、国の代表であることを理解し、責任感を感じながら苦労して掴んだ金メダルだったと、明かしてくれた。

 その努力は母国の人々の心を動かした。グアダルーペコーチは、こう振り返る。「スペインでは知的障がい者は、知恵が足りないと誤解されているところがあります。彼女も小さいころ、いじめに遭っています。でも、パラリンピックで勝ち、健常者の大会にも参加してファイナルに残るようになるにつれ、知的障がいの人たちが評価されるようになっていきました。障がいがある子どもたちやその親にとって、彼女の活躍は勇気を与えているんです。彼女はスターです」

 そして、こう続ける。

「クラブでは、盲目の選手やダウン症、自閉症、身体障がいの選手なども教えますが、彼らが少しずつ自立していく姿から、私自身、たくさんのことを学んでいます」

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