パラアイスホッケー代表監督が、
17年間選手に伝え続けたアスリートの魂

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 バンクーバー大会以降は、Bプールへの降格や14年ソチパラリンピックの出場を逃すなど、低迷期に突入。内外からの厳しい批判もあえて正面で受け止めた。自身を責め、人知れず涙を流したことは一度や二度ではない。それでも、「私は選手の力を信じている」と言い続け、情熱を持って17年間を過ごしてきた。

 現在は日立製作所の常務、海外法人の会長を務める中北監督。海外在住ということもあり、直接指導する機会を減らし、信田憲司、町井清両コーチへとバトンをつないできた。今大会はチームマネージャーはじめ、トレーナーやドクター、イクイップメント(用具のメンテナンス)も帯同し、バックアップした。「スタッフは本当によくここまで支えてくれた」と中北監督。

「選手は私にとって子どもみたいなもの。いろんな選手がいて、いろんなことがあったけれど、感謝は絶えないし、私にとってこのチームは誇りです」

 今後は現場を離れるが、協会理事長と強化責任者の職は継続予定とのこと。また、「パラアイスホッケー界に恩返しをしなくてはいけない。選手たちにパラスポーツの難しさやすばらしさを教えてもらった。まだ彼らが活躍しにくい世界だから、スポーツの仕組みから変えていくことが今後の私のミッションだと思っている」と話し、普及活動などへの関わりにも意気込みを見せている。

 日本は次回、2021年のBプールの世界選手権を戦うことになる。翌年の北京パラリンピックに出場するには、まずはこの大会で上位に入り、最終予選に進むことが必須条件となる。Cプールで優勝した中国、国ぐるみのドーピング問題による資格停止処分が条件付きで解除されたロシアも虎視眈々と上位を狙っており、これから世界勢力図は大きく変わるかもしれない。日本は今回の悔しさ、無念さを力に変え、プライドを胸に戦う集団へと成長していってほしい。

 中北監督の後任は、6月の新シーズン開幕時に発表される予定だ。日本代表の再出発を今後もしっかりと見届けたい。

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