一発屋の気分はもういらない。パラ陸上、芦田創は新環境で進化を求める (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Murakami Shogo、YUTAKA/AFLO SPORT(競技)

 また、踏切足を、従来とは反対の右足で試すことも考えている。芦田には、5歳のときに発症した腫瘍の治療の影響で、右腕が短いという障がいがあり、質量にして2kgほど軽い。これまでは重いほうの左腕で空中バランスを取ろうと左足で踏み切っていたが、逆に姿勢が左に傾きがちで、着地で損をしていた。

 自身の体の特性に向き合い、最適なフォームを探ったところ、右足で踏み切れば、左の強い背筋を使って理想の着地姿勢をとれるのではないか。また、長年の競技生活で捻挫を繰り返し、慢性的な痛みがある左足首よりも、フレッシュな右足で踏み切ることのメリットもありそうだ。

 踏切動作の定着は簡単ではないが、「今から始めて、東京にギリギリ間に合うかどうか。でも、葛藤の1年を経験して、『これだ』と思えている自分がいる」

 新たな環境でもまれることで、どんなページが開くのか。「楽しみです」。芦田の瞳が、キラッと光った。

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