一発屋の気分はもういらない。パラ陸上、芦田創は新環境で進化を求める (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Murakami Shogo、YUTAKA/AFLO SPORT(競技)

アジアパラでは銅メダルに輝いたが、悔しさも残ったアジアパラでは銅メダルに輝いたが、悔しさも残った とはいえ、1カ月もするとコーチの理論が理解でき、パフォーマンスにも進化を感じた。助走スピードはこれまでとそう変わらないのに、踏切では明らかな浮遊感が得られるようになったのだ。

「今年は、安定して7mジャンプができそうだ」

 大きな自信とともに帰国した芦田は、再び、礒コーチとのタッグで今季をスタートさせた。しかし待っていたのは、試行錯誤の日々。シドニーでつかんだ踏切動作と、礒コーチと培ってきた助走技術とがなかなかかみ合わなかったのだ。実は、アジア大会も、「厳しいかな」という見込み通りの結果だったという。

「速く走れないと、遠くまで跳べない」という考えから、助走にこだわった礒コーチの指導で、走り幅跳びを本格的に始めたときは5mほどだった記録が7mを越えるまでに伸びた。ここに、踏切の技術が備われば、さらなる成長が期待できるのではないか。

「もう一度、シドニーに行こう。踏切動作をもっとじっくりと高めたい」

 芦田がジャンパーとしての自身の伸びしろを信じ、可能性にかけてみたいと思ったのは自然の流れだった。

 そんな思いを理解し、背中を押して送り出してくれた礒コーチには、「感謝の思いしかない」と芦田は力を込める。恩は、結果で返すつもりだ。

 シドニーでは、踏切動作を中心に、さまざまなチャレンジを考えている。例えば、助走スピードをできるだけ減速させずに踏み切るため、「うまい足さばき」を身につけること。

 もう一つは、踏切の精度を上げるため、助走のスタート方法を見直すこと。これまでは補助走を入れてから走り出すローリングスタートを取っていたが、加速しやすい分、その日の調子によって踏切位置がズレやすいというデメリットもあった。今後は補助走なしのセットスタートに変え、助走の1歩目から踏切を意識して地面をしっかりプッシュをし続け、最後に踏切という大きなプッシュにつなげていく、一貫性のある動きをイメージしている。

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