井上雄彦が語る車いすバスケ世界選手権。日本代表の闘いは一見の価値あり (2ページ目)

  • 井上雄彦●取材・文市川光治(スタジオ光)●構成・文名古桂士、伊藤真吾(X-1)●撮影・文

「インサイドをやられてしまった時に感覚の中で苦しくなっていくことがある。インサイドでやられるとオフェンスでもインサイドで行くのが怖くなってきたりして、相手の高さをもろに感じてしまう」

 国際試合経験豊富な藤本怜央は、ゴール近辺で闘っている選手の心理をそう説明してくれた。

 インサイドでの劣勢から、ディフェンスでもオフェンスでもチームに嫌なムードが漂っていった。このクォーターの得点はスペイン16点に対し日本はわずか5点。

 3Qに入ってもその流れは続く。日本のオフェンスがうまく機能しないまま残り4分31秒のタイムアウトまででさらに8-2のラン、その後も3連続ゴールを許し、44-29の15点差と広げられて最終クォーターを迎えた。スペイン応援団はもはや勝利を確信しているようだった。

 4Q開始早々、ついに日本はプレスを仕掛ける。怒涛の追い上げで日本チームの真骨頂を見せる。オールコートでプレスをかけるディフェンスにスペインがハマる。ボールを奪取し得点を奪う。4連続ゴールで早めに1桁の9点差まで詰め寄ったことで追いつける態勢に入った。残りはまだ6分14秒ある。スペインはたまらずタイムアウト。私のノートには「まだ間に合う!」と書いてある。

 日本の執拗なプレスは止まらない。そこからの3分間、スペインを無得点に抑えている間に9点を奪い、圧巻の17連続得点。

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