車いすバスケU23。課題山積みも新戦力の躍動でチーム力UPに期待 (3ページ目)

  • 斎藤寿子●取材・文 text by Saito Hisako
  • photo by X-1

 一方で、鳥海はこう反省点を口にした。

「相手も打開しようとする中で、僕らとのマッチアップを避けて、例えばミスマッチになった時に、そこからどうやって戻していくかということは次の課題だなと思いました」

 そして、こう続けた。

「決勝でオランダと再戦となった時にどうするか、この後ビデオをしっかりと見たいと思います」

 この鳥海の言葉からもわかるように、日本チームの頭にあったのは「決勝進出」と「優勝」のみ。京谷HCも「今日の試合では、いろいろなディフェンスを試して何がいいかわかったので、決勝を楽しみにしていてください」と語っていた。指揮官も選手も負けたままで終わりたくはなかったはずだ。

 しかし翌日、日本がタイに勝利した試合の裏で、大方の予想を覆す形でオランダがカナダに敗れた。そのためタイを除く3カ国が2勝1敗で並び、大会のルール上、ゴールアベレージで争われた結果、日本は決勝カードから漏れてしまった。

 3位決定戦にまわることが明らかとなった時点で、京谷HCはすぐさま頭を切り替えて、選手たちにこう告げた。

「事実を受け止め、最後のタイ戦に全力で臨もう」

 そして、具体的な課題を提示した。予選リーグではタイに63−32で大勝していたため、「70得点以上、32失点以下」でさらに質の高いゲームをすることを求めたのだ。

 試合は日本のワンサイドゲームとなり、攻守ともに圧倒した日本は、69−26と予選リーグ以上の差で勝利を挙げた。しかし、京谷HCは納得していないことが一つあった。目標としていた70点まであと1点足りなかった得点だ。

 実は4Qの残り2分、指揮官はある狙いを持って選手交代をしている。3年後のU23世界選手権の出場資格を持つ、鳥海、赤石、高松義伸、古崎倫太朗、知野光希の5人をコートに送り出したのだ。全員が10代。赤石、古崎、知野は高校生で、知野に関しては公式戦では国際大会の経験はゼロというメンバーだ。しかし、3年後には彼らが中心となって世界に挑まなければならない。

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