ブラサカ日本代表が強豪国に善戦。2018年は確かな成長を遂げた (2ページ目)

  • 井上俊樹●取材・文 text by Inoue Toshiki
  • 日本ブラインドサッカー協会●写真提供

 残り2分を切り、加藤健人(埼玉T.Wings)が相手陣内深く、右サイドでボールをキープする。緊張感のあるせめぎ合いが10数秒続き、その一連の攻防を会場全体が固唾を飲んで見守った。

 主審の笛が吹かれた瞬間、「ファウルを得た」と観衆の安堵のため息が場内を包んだが、プレーはドロップボールで再開。会場全体が微妙な空気に陥った。

 結果、直後に許したアルゼンチンのシュートは枠を外れて事なきを得たが、再開後にボールを奪われ、ドリブル突破で3人がかわされると痛恨の失点につながった。

「プレーが1回切れて、ふわふわしていた。ファーストDFの限定がちょっと遅れてしまった。(同じ)セットプレーでも、コーナーキックだと誰がいく、など明確だが、ドロップボールはみんな同じような距離(でのプレー再開)。ブラインドサッカーはとくに見えない状況だから、ドロップボールからの対応は難しかったと思います」(高田敏志監督)。

 そのまま後半も変わってしまった流れを取り戻せず、2失点でほろ苦い逆転負けを喫した。

 収穫といえば、前半は持ち前の組織力で主導権をほぼ手中に握ったこと、そして一本のドロップボールをきっかけに、ホームの観衆の空気が一変し「心理戦」の要素がより色濃くなったことを体感できたこと。今後は、そうした事態が起きた場合の対策の構築、そして後半のように圧倒的な個の力を前面に出してきた相手にどう対抗するか、貴重な「宿題」を提示された形となった。

 今年は、「世界レベル」との対戦にこだわった1年だった。昨年マレーシアで行なわれたアジア選手権で敗退し、今年6月の世界選手権(スペイン・マドリード)への出場が叶わず、世界の強豪相手との対戦機会を失ったからだ。

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