2018.11.11

東京パラリンピックの金メダル候補が語る
「東京の街への期待」

  • 吉田直人●取材・文・写真(人物)text&photo by Yoshida Naoto
  • 越智貴雄●写真(競技) photo by Ochi Takao

 2012年に陸上競技に触れると、たちまち頭角を現した。14年の『パラ陸上欧州選手権』でドイツ代表の座を掴むと、16年のリオ・パラリンピックでは100m、走り幅跳びで銅メダルを獲得、400mリレーではドイツの金メダル獲得に貢献した。17年の世界選手権は、リオ後の故障も影響して欠場したが、今シーズンより復帰。自己記録は、すべて今季マークしたものだ。100m、200mともに、前述のリチャードの世界記録(100m10秒61、200m21秒27)に肉薄しており、東京パラリンピックにおける金メダル候補の一人といえる。

「故障をきっかけにハードなトレーニングを見直したんだ。リラックスを心掛けて、走る動作を一つずつ学び直した。結果として、加速力がアップして、周囲の選手から抜きん出ることができた。(自己記録をマークできたのは)トレーニングのポイントが明確になって、良い準備ができたからだろうね」

 特筆すべきは、その万能ぶりである。走り幅跳びの7m71はT64の今季世界2位。上に立つのは、オリンピックの優勝記録を凌ぐ8m48を持つマルクス・レーム(ドイツ)のみだ。フェリックスも、トレーニングでは8m超えの跳躍を見せており、パラアスリート2人目の8mジャンパーになる日も遠くはない。助走と踏切という異なる動作からなる走り幅跳びでは、スピードとタイミングで記録が大きく左右される。加えて、義足の反発性をコントロールするスキルも要求されるため、フェリックスは極めて高い身体能力と競技センスを有していると言えるだろう。

 フェリックスの潜在能力の高さは、彼の言葉からも伺える。

「助走速度は速くても、そのスピードを、まだ上手く跳躍に生かせていないんだ。その点マルクス(・レーム)は、助走で作り出したパワーを殺さずに、跳躍に転換できている。僕は彼に比べて、スプリントにおけるポテンシャルは持っているけれど、彼はまた異なる潜在能力を秘めている。互いの可能性についてはよく観察しあっているから、記録を伸ばす余地は大いにあると思う」

 実は、両者は”チームメイト”でもある。ドイツのナショナルチームとしてだけではなく、在籍するチームが同じなのだ。ドイツ西部・レヴァークーゼンの総合スポーツクラブ『TSV Bayer 04 Leverkusen』の保有するチームに所属。同チームには、2人の他にも世界的なパラアスリートが在籍し、健常の選手と共に、障がいの有無で違いを設けることなくトレーニングを行なっているという。

「双方(健常の選手とパラアスリート)で互いに学ぶことは多い。パラアスリートだからと、特別なことをやっているわけではなくて、競技者として現状の改善をただ、していくだけさ。どんなトレーニングがベターか、聞いたり、教えたり、共に考えたり……。トレーニングは大好きだ。トラックに入るとモチベーションがあがる。練習場所までチームメイトを引き連れていくのはいつも僕なんだよ」