東京パラ出場を目指す菅野浩二。ある助言を機にクァード転向を決意 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 川野と直近では、今年1月のオーストラリアの大会のコンソレーション(トーナメントの早い段階で敗れたプレーヤー同士が行なう試合。本戦や成績とは無関係)で対戦しているが、意外にも本戦で対戦するのは初めてのことだ。とはいえ、普段はともに練習する仲。互いのプレーを知っているだけにやりづらさはあったが、「川野選手はすごく強い。今回、互いにベストな状況で試合ができてよかったと思うし、価値ある勝利だと思います」と語る。

 シングルス決勝では、韓国の選手に3-6、6-4、1-6で敗れたが、その要因について、「スタミナ負け」と菅野。「気温30度以上のなかでの試合は、東京パラでもきっと同じ条件になるので、意識して暑さ対策はしていたけれど、ジリジリとした暑さにやられてしまい、いつものパフォーマンスができなかった」と振り返った。

 15歳の時、バイクの後部座席に乗っていて交通事故に遭い、頸椎を損傷。20歳で車いすテニスを始め、競技歴は17年になる。四肢に麻痺があり、汗をかきにくい。ただ、利き手の左手はテーピングを巻かなくてもよい程度の握力があるため、これまではクァードではなく、下肢障がいの選手が出場する国枝たちと同じ「男子」でプレーしていた。

「世界を意識したことはなくて、国内トップのベテラン選手たちと試合をしたいな、その結果、勝てたらうれしいな、というスタンスだったんです」

 ただ、全国のトップ選手8人だけがエントリーできる日本マスターズには、いつか出場したいという希望は持ち続け、JWTAランキングは9位まで上げていた。2016年には上位選手の欠場による繰り上げで、その日本マスターズに初出場。予選敗退となったものの、目標を叶えて充足した気持ちになったという。

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