競技歴1年弱でアジア5位。パラ・パワーリフター樋口健太郎が歩む道 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 この時の記録は136kg。それから本格的に競技を始め、この1年弱で35kgも記録を伸ばしている。この成長曲線にさらなる期待が高まるが、世界のトップ選手との差はまだ大きい。今大会、金メダルを獲得したイランの選手は209kgから、銀メダルを獲得したイラクの選手は213kgからスタートしている。しかも優勝したイランの選手は、特別試技で229kgの世界記録更新に成功し、樋口の目の前で世界一の力を示した。

「すごいなと思うし、やっぱり悔しいですよね」

「はやくこれに追いつけるように頑張りたいなと思います」と語り、再び表情を引き締める。

 大腿切断者などの陸上チーム「スタートラインTokyo」にも参加している。樋口には、義足ユーザーとしてパラ競技を通して障がい者の社会的認知度を向上させたい、というもうひとつの目標がある。いろいろな義足があることを知ってもらおうと、今年5月の「チャレンジカップ京都大会」では、スポーツ用の板バネの義足で出場したりもした。教師、そして競技者という強みを生かして、義足の体験会や講演会などにも積極的に協力していきたいと話す。そのためにも、自身の競技パフォーマンスをさらに磨いていくつもりだ。

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