車いすバスケ、いつもと違う世界9位。最終戦で新しい強さを見せる (2ページ目)

  • 斎藤寿子●取材・文 text by Saito Hisako
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

 それでも、最後の9、10位決定戦では、同じヨーロッパの強豪オランダに1点差で競り勝った日本。順位決定戦とはいえ、最後に勝利で終えたことの価値は決して小さくはなかったはずだ。そして、実はこの試合の"勝ち方"にこそ、日本の新しい強さがふんだんに示されていた。

「決勝トーナメントで負けた中で、この試合にどういう価値を見出し、次へのエネルギーを創出するかは、これから東京に向かっていく我々にとってはとても大事だった」と及川晋平ヘッドコーチ(HC)。その指揮官が決断したのは、スターティングメンバーの変更だった。決勝トーナメント1回戦までの4試合のスタメンは、エース香西宏昭、キャプテン豊島英、秋田啓、宮島徹也、岩井孝義のラインナップ。今、攻守にわたって最もバランスの取れた組み合わせだ。

 しかし、この日、スタメンに起用したのはそのラインナップではなかった。香西、豊島に変わって、鳥海連志、古澤拓也が入り、秋田、岩井といずれも20代の若手メンバーに経験豊富な宮島の5人。6月に国内で行なわれた国際親善試合「三菱電機ワールドチャレンジカップ」のカナダ戦では同点の場面で初ぞろいし、チームを勝利に導く活躍を見せたラインナップだった。しかし公式戦で、しかもヨーロッパの強豪相手に、エースもキャプテンをもベンチに残したその光景は、明らかにこれまでの日本にはなかった。

 それは「東京に向けての決意表明」だったと及川HCは語る。

「世界の舞台を経験していない若いメンバーで勇気を持って臨み、また選手たちも勇気をもってプレーしてくれた。これが間違いなく彼らを強くする」

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