ベスト歩数は「19」から「17」へ。弱視ジャンパー澤田優蘭が今季好調 (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 2015年、本格的に競技に復帰するため、再度クラシフィケーション(クラス分け)を受けると、今度は「T12」に認められた。伴走者と紐を持って走ることや、すぐ隣を人が走ることにも、当初は慣れなかったが、時間をかけて練習を重ね、そうした不安を払拭していった。

 走り幅跳びは、「T13」では踏切板の幅は通常と同じ20cmだが、「T12」の場合は1mとサイズが変わる。さらに砂場の幅も広くとられている。また、介助がつくことで、ウォーミングアップも安心してできるようになり、「障がいによって集中できない、というストレスから解放されたことが、リスタートを切るうえで大きかった」と、澤田は振り返る。

 昨年6月、アスリート雇用でアパレル大手の企業に入社した。練習に集中できる環境に身を置くようになり、日本記録を次々と塗り替えた。そして今シーズン、これまでの努力の積み重ねが花開いたかのように、澤田は成長を続ける。

 走り幅跳びでは、「これまで5mを出すのが精いっぱいだった」のが、5月の北京グランプリでは、1本目の跳躍で自身が持つ日本記録を60cmも更新する5m63を跳び、さらに2本目でそれを上回る5m70に成功した。アジア記録まであと4cmと迫る大ジャンプは、ここまで今季1位の記録だ。6月のワールドパラアスレティクスグランプリ・パリ大会でも5m30、また7月1日の関東パラでも5m28と、連戦の疲れがあるなか安定したジャンプを見せている。

 好調の理由のひとつが、助走の安定だ。とくに自己ベストを出した北京グランプリは、6本の試技を通して風の影響が少ない好条件だったこともあり、助走のスピードも、踏切直前のリズムの刻みも、着地もイメージ通りにできた。この感覚を次につなげたいところだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る