パラトライアスロン秦由加子。「大腿義足で5kmを走る」ことの凄さ (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by MATSUO.K/AFLO SPORT

 秦は所属会社にかけ合い、練習時間を以前より増やした。また、代表合宿とは別に、オリンピック選手たちが世界から集まるタイの練習場で自主的に長期合宿を行なうようにもなった。パラ選手は自分だけという環境のなかで、実力者たちに食らいつく練習は厳しいが、得るものも大きい。

 こうした、競技を支えるテクノロジーの充実や周囲の協力による競技環境の整備、そして、きつい練習に立ち向かう意志。さまざまな努力を重ねてきたことで、今大会を前に成長の手応えは十分に感じていた秦。「いい状態でスタートラインに立つことができた」からこそ、結果を出せなかった悔しさや不甲斐なさが大粒の涙になったのだ。

 大きな目標として掲げる東京パラリンピックまでの「あと2年」について、秦は涙をぬぐい、こう言い切った。

「あっという間だったと思うか、十分な時間だったと思えるかは、これからの自分次第。『たっぷり時間があった』と思ってスタートラインに立てるように、しっかりがんばりたい」

 多くの応援を力に変え、結果で恩返しするその時まで、「まだ2年」ある。

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