東京五輪まで2年。ブラインドサッカー日本代表は「強豪国と激戦」 (3ページ目)

  • 井上俊樹●取材・文 text by Inoue Toshiki
  • 高野洋●写真 photo by Takano Hiroshi

 ブラインドサッカー独特の音が鳴るサッカーボールを「シャンシャンシャン」と軽快に鳴らす。1拍目はドリブルで中央に切れ込み、2拍目で左足を振った。3拍目、シュートは前方のDF2人の間、GKの右脇下を抜き、ゴールネットを揺らした。射抜くというより、コースを狙って置きにいくシュートだった。

 川村のゴールは日本が練習から繰り返してきた形だった。ゴール前に詰めていた加藤も含め、狙い澄まして決めた「シャンシャンシャン」と奏でるゴールまでの動きを、まるで儀式のように大切に執り行なった。

 川村はそのゴールをこう振り返る。

「日本代表がこれまで積み重ねてきた日本のサッカー、貪欲にゴールを狙っていく形はできたと思います。あの1点は冷静に、練習通りに決められました」

 このゴールが決勝点となり日本代表は2勝1敗、5位で大会を終えた。右手でガッツポーズをつくった川村は、高田敏志監督の元に駆け寄り喜びを分かち合うと、そのまま黒田の元に駆け寄った。フェンスを挟み、コート内外でよろこび合う2人の日本代表エースの姿は、最も美しい大会ハイライトシーンのひとつとなった。

 大会最終戦、フランス戦20分ハーフの激闘を経ての1−0での勝利の瞬間、日本は全員でよろこびを爆発させた。2年後、東京パラリンピックでメダルを目指すチームが確かに品川の地で大きな一歩を踏み出した。

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