道下美里、ブラインドマラソンで世界新も、
まだ東京の「金」までの途中

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News(競技)、Murakami Shogo(人物)

 リオを終え、「圧倒的なスピードをつけ、東京のスタートラインには自信を持って立つ。今度こそ、悔いのないレースをする」と誓った。まず、東京までの4年間、大まかにマラソンの目標タイムを決めた。今年冬には2時間55分台、2018年は52分台、19年に50分台と上げていき、2020年は得意の走り込みで最後の仕上げを目指す。

 その1年目の今年は基礎スピードの養成として、「5000mで18分台」を目標に掲げた。距離はいくらでも走れるが、スピード練習はもともと苦手だった。故障のリスクも大きいので、これまでは敬遠しがちだったが、今年は果敢に取り組んだ。実際、足に痛みが出ることもあったが、「自分の特性を知るいい機会」と前向きに捉えた。

 例年よりトラックレースにも積極的にエントリーし、5月には5000mで19分10秒66の自己新をマークした。その後、猛暑下のレースがつづき、18分台という明確な結果は出なかったが、「(防府マラソンでは)これまできつかったけれど1km4分8秒というペースが楽に感じられた。スピード練習の成果だと思う」と手応えは掴んだ。

 来年はトラックでも結果を出し、「スピードもあるぞ、ということを示したい」と意気込む。さらに東京大会での暑さ対策を見据え、8月開催の北海道マラソンにも照準を合わせ、「夏マラソンへの自信をつけたい」と新たな目標にも挑むという。

 道下は中学時代に右目を失明。左目も今はほとんど見えない。だから、目の代わりとなる伴走者とのチームづくりが欠かせない。力を引き出してくれる大切な存在でもあるからだ。

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