リオパラ50m自由形銅メダルの山田拓朗は「片手バタフライ」も挑戦 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 佐山篤●写真 photo by Sayama Atsushi

 そして今、山田はリオの経験を糧に、2020年に向けて再び挑戦を始めている。スタート技術のさらなる向上を目指し、この1年は「身体のパワーアップ」を特に重点的に取り組んできた。義手を使ったトレーニングで、左右のバランスを調整して、「身体の変化は実感しているし、力の発揮もかなりよくなってきている感覚がある」と手ごたえを口にする。

 また、リオ後に「50m自由形以外の種目でも世界と戦えるように」と話していたように、新たに100mバタフライと個人メドレーも泳ぐようにしている。バタフライはクロールに近い呼吸動作ができる"片手バタフライ"を模索しているところだ。

 左手が短い山田の場合、両手バタフライにすると、呼吸動作で水面に上がるときに体が傾く。水平に保つためには、左側の背筋をかなり使うことになってしまう。片手にすれば推進力は失われるものの、呼吸動作での体力の消耗を軽減できるという計算だ。実際に記録は伸び、9月のジャパンパラ競技大会でも日本記録を更新するなど好調を維持している。

 この新たな取り組みは、それぞれ相乗効果が期待できる点も大きい。「片手バタフライは右手のストローク技術が向上すれば、50m自由形にも生きてくると考えています。個人メドレーに関しても、力の抜き方や入れ方が必要で、効率よく泳ぐための体の動かし方が今までよりも上手になれば、やはり50mも速くなるのかなと思いますね」と山田。また、スプリンターの山田にとって、ほかの種目に挑戦することが、「いい気分転換になっている」そうだ。

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