義足の女子ジャンパー前川楓が「あの名選手」の助言で掴んだ銀メダル (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News

 必死に探して出会ったのが、井村(旧姓:池田)久美子氏だ。女子走り幅跳びの日本記録保持者で、北京オリンピック代表でもある。現在、前川の実家近くの三重県鈴鹿市で、夫の俊雄氏とともに、ジュニア対象の陸上クラブを主宰している。今年2月、思い切って訪ねると、受け入れてもらえた。

「運命だと感じました」

 専門家の指導は的確で分かりやすい。最初にジャンプを見てもらったとき、「踏み切りの最後の一歩が大きすぎて損をしている。いつもより手前につくよう意識して」「助走は100m走とは別物。速ければ速いほど跳べるのではなく、速いけど、確実に踏み切って跳べる速さで走ることが大切」と教えられた。助走スピードに影響する100mも、「股関節に踵(かかと)があるイメージ」でフォームを改善中。以前より上下動が減り、7月の関東大会では初めて17秒台の壁を破り、日本新記録(16秒86)を樹立した。

 コーチのアドバイスで、前川の跳躍技術は磨かれていった。3月末の海外の大会で3m76を跳び、日本記録(3m68)を塗り替えると、5月には大分の大会で3m97まで延ばした。

 銀メダル獲得の要因を改めて尋ねると、「井村コーチとの出会い」と即答した前川。実は今大会、メダリストには自身用とは別に、もうひとつ「コーチメダル」が授与されていた。世界選手権史上初の粋な計らいで、選手はメダルというかたちでコーチに日頃の感謝を伝えることができるのだ。前川はもちろん、「井村久美子コーチと俊雄コーチの2人」に贈るという。

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