義足の女子ジャンパー前川楓が「あの名選手」の助言で掴んだ銀メダル (2ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News

「とにかく、記録を出そう」

 前川は冷静にこの日のジャンプを分析し、反発力の強いトラックで、助走のストライドが思った以上に伸びてしまっていることに気づく。

 似たような状況に陥った7月初旬の国内大会での経験を思い出し、「スタート位置はそのままで、脚をちゃんと引いて走ることを意識しよう」と決めた。

 そうして挑んだ後半戦。雨も小降りとなり、天候が回復するにつれ、前川の記録も上り調子になる。4回目に3m43を跳ぶと、記録なしの最下位から一気に2位に躍り出た。5回目も3m61と延ばし、本人も一番手ごたえがあったという6回目のジャンプは3m79。2位のままで自身の試技を終えると、身体が冷えないように日本代表ジャージを羽織り、ベンチに座って戦況をじっと見守った。

 残り5人の試技が終わり、銀メダルが確定すると、前川の笑顔が弾けた。スタッフから日の丸を渡され、背中に掲げて大きくポーズ。フォトグラファーの要求に何度も応えた。金メダルのカイローニから抱擁を求められたときは、「信じられなくて。でもうれしかった」。メダリストになった実感が沸いてきた。

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