「君もやってみないか?」の勧誘でパラ・パワーリフティングが強化中 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 選手の裾野が広がりつつあるのと同時に、そのレベルも全体的に上昇傾向にある。その理由のひとつに挙げられるのが、パラ・パワーリフティング界の世界的指導者、イギリスのジョン・エイモス氏の直接指導だ。エイモス氏は元選手で、引退後は母国イギリスで初の金メダリストを育てた名コーチとして知られる。連盟の尽力もあり、今年4月から年に4回の予定で国内の強化合宿への招聘が実現。エイモス氏は、選手やコーチに技術指導とトレーニング指導を行なっている。

 これまでは選手の多くが、自宅や個人ジムで練習してきた。その結果、競技には不要な筋肉がついたり、「より重く」を追求するあまりケガをしたりする選手が多かった。身体の構造を熟知するエイモス氏は「パラ・パワーリフティングは片脚切断や機能障がいなど、障がいによってフォームや呼吸法が異なるものだ。選手本人もコーチもそれを理解しなければならない」と説き、選手18名について一人ひとりのトレーニングメニューを作成している。

 戸田は4月からエイモス氏の指導を受け、飛躍的に記録を伸ばしている選手のひとりだ。今大会11人がエントリーした男子59kg級で、自己ベストを10kg上回る120kgを挙げて優勝した。

「これまでは自分を追い込むハードな練習をしていたけれど、ジョンのメニューはターゲットにピークを合わせていく長期プラン。最近は身体の痛みもないし、安定感が増してきた。今はこのメニューをこなせば成長できる、と迷いがなくなった」と全幅の信頼を寄せる。

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