パラ陸上のレジェンドが語る。競技用車いす「レーサー」30年の変遷 (5ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu

 永尾さんは、こう振り返る。「そもそも僕らの時代は、アスリート雇用自体なかったに等しい。でも、会社勤めでもフリーでも、競技に対する思いや姿勢は変わらないんですよ。言うなれば、僕にとって陸上は『ものすごく真面目な道楽だった』ってところでしょうか。それでも、得るものは同じですから」

 そして、「競技に集中できる環境を得るのは大事なこと」と前置きしたうえで、これからの陸上界を支える後輩たちに向け、こう話す。「『競技バカ』になってはいけない。自分が置かれた環境のメリットもリスクも承知のうえで、競技に取り組む覚悟を持ってほしい」

 引退したスポーツ選手が「後悔はありません」と話す場面をニュースなどで見かけるが、永尾さんは「僕は"もっとこうすればよかった"っていう後悔がいっぱいある」と笑う。「だからこそ、若い人たちに言いたい。こうだと思ったら、どんどん挑戦してほしい。一歩踏み出す勇気さえ持てば、案外、想像以上にやれたりするものです」

 今後は次世代アスリートの育成などに携わっていくという永尾さん。自身の努力で培った知識と経験を、惜しみなく未来に伝えていく。

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