車いす陸上短距離の超人。パラ7回出場の永尾嘉章氏が、ついに引退宣言 (4ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 実はかつて、1500mやマラソンといった中長距離でも好タイムを出していたという。それなのに、あえて海外勢に水をあけられている短距離界を選んだ理由は、いったい何だったのか。その素朴な疑問の答えを、永尾さんはこう教えてくれた。

「T54の短距離は本当に力勝負の世界。競技として"凄み"があると思うんです。長年ライバルで、リオの100mで金メダルを獲ったレオ=ペッカ(・タハティ/フィンランド)は短距離を極めた圧倒的なオーラがあるし、400mで優勝したケニー(・ファン・ビーフヘル/オランダ)なんかも本当にオンとオフの切り替えが巧くて速い。どうしたって彼らの力を認めざるを得ないんです。でも、そういうとんでもない奴らに、やっぱり勝ちたいじゃないですか。僕の原動力は、そういうところでしたね」

 世界を知るアスリートの矜持(きょうじ)が、そこにあった。

 4月から日本パラ陸上競技連盟のスタッフとして、次世代アスリートの育成に関わっている。すでに合宿帯同などをこなしており、充実した日々を送っている。

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