警戒される国枝慎吾。
車いすテニス男子のグランドスラムはどうなる?

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 終盤に疲れが出たことを本人も悔しがったが、トップレベルならではの速いテンポのラリーや激しいチェアワーク、心理戦によるものが大きい。それを体感したがゆえに、冒頭のセリフが口をついたのだろう。

 この試合では、ショットの軌道がわずかに逸れてアウトになる場面が何度かあり、「詰めの甘さを感じた」と話すが、このあたりは練習と、実戦で試合勘を養うことで改善できるポイントと見る。

「今大会は(世界のトップレベルを相手に)どのショットが通用して、どのショットがダメなのかを見極めるスタンスで臨んでいた。そういう意味では、強敵のフェルナンデスと対戦できてよかったし、帰ってやるべきことが明確になりました」

 今大会は帯同していなかったものの、試合のスタッツを確認していた丸山弘道コーチは、「今の彼のなかでベストのものは出せたと思う」とコメントする。

 国枝は昨年4月、古傷の右ひじの内視鏡によるクリーニング手術を行なった。リオパラリンピックでは痛み止め注射など、さまざまな処置をしてシングルス3連覇を狙ったが、準々決勝で敗退。その後、11月に痛みが再発して、本人いわく「リオの後はもうテニスがやれる状態ではなかった」。医師のアドバイスもあり、完全休養期間をとることになった。

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