大分国際車いすマラソン優勝の佐藤友祈、「東京では金メダル獲ります」 (3ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

 挨拶すると、「一緒に練習しようか」と気さくに誘われた。走ってみせると、自己流のフォームを「悪くない」と言われ、自信になった。さらに、「胸と膝の中に空間をつくり込むイメージで漕いでみて」など、分かりやすい例えを使った松永の教えは経験の浅い佐藤にも理解しやすかった。

 一方の松永は、「第一印象では体つきも実力も、(メダリストとなった)今の姿が想像できるような選手ではなかった。でも、センスはあったし、練習を始めたばかりなのに、『パラリンピックに出る』と高い目標を口にしていたところに可能性を感じた」と振り返る。

 以来、まっすぐな佐藤の思いは松永にも伝わり、2人の練習機会は増えていく。佐藤のタイムも急激に伸びた。15年9月には松永の推薦もあり、松永の所属するグロップサンセリテに入社。10月末の世界選手権で代表入りを果たし、初めての大舞台で400mの金メダルを獲得。「リオ代表の推薦1位」も射止めてしまった。

 今年3月には松永の奔走の末、社内に車いす陸上競技部、World AC(ワールド・エーシー)が設立され、佐藤は国内でも数少ない、車いすの実業団選手になった。正社員として仕事もこなしながら、遠征費支援や就業時間の優遇などが受けられ、練習環境がさらによくなった。

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