53歳、短距離界のパイオニア。永尾嘉章が挑んだ7度目のパラリンピック

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと/MAスポーツ●写真 photo by Yoshimura Moto/MA SPORTS

「今回がメダルに一番近いと思っていました。(予選全体の)リザルトもちょっと落ちていたので、チャンスだっただけに本当に残念です」

7度目のパラリンピックでさらに成長した姿を世界に示した永尾嘉章7度目のパラリンピックでさらに成長した姿を世界に示した永尾嘉章 永尾嘉章(よしふみ/兵庫県加東健康福祉事務所)が挑んだ、車いすT54クラスの男子100m。予選は14秒76で第1組の2着。見事に着順で突破した。だが、決勝ではレース序盤からトップに一気に引き離れてしまう。14秒71と予選よりタイムは上げたものの、一番後方でゴール。結果は8位入賞。日本人唯一のファイナリストは、「悔しさしか残らなかった」と無念さをにじませた。

 このT54クラスは、車いすの中でもっとも障がいが軽いクラスだ。世界的にも選手層が厚い。とくに100mなど短距離レースでは、身体能力が高い欧米の選手が強いとされてきた。しかし、近年ではタイや中国の選手も力をつけてきており、アジア人も存在感を見せている。そんななかで永尾は長年、日本代表としてこの激戦区を主戦場としてきた。

 長年、と言ってもここ2~3大会の話ではない。永尾が最初に出場したパラリンピックは、1988年のソウル大会だ。それから2008年の北京大会まで6大会連続で出場。今回のリオは、実に7大会目となる。

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