以心伝心でともに戦う。選手を支えるボッチャの競技パートナー (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと/MAスポーツ●写真 photo by Yoshimura Moto/MA SPORTS

 高橋選手は、柔道で頸椎損傷の大けがを負い、胸から下の感覚を失った。ちょうど「自分に勝負としてできること」を模索していた時期で、ふたりで地元の名門・埼玉ボッチャクラブを見学。大西さんは高橋選手の生活介助に関わりながら、競技に取り組むようになった。

 昨年の今頃は競技を学ぶ途中で、まだ「ボールはどれも丸だから同じように転がると思っていた」(大西さん)。そこから、他の選手のランプや戦術を見て少しずつボールの特性を学び、コートにメジャーを置いて繰り返し投げ、安定したボールの距離感を探し続けた。

 ここから先の歩みは、実に鮮烈だ。ストイックに自分たちのプレーに集中する日々を過ごすうちに、どんどん上達していった。試合で対戦する相手はすべて格上にも関わらず、日本選手権の予選会を突破。続いて昨年12月の本大会で見事優勝したことで、「高揚感を感じる間もなく」今年3月の世界選手権(北京)へのエントリーが決まった。そのうえ、初出場ながら銀メダルを獲得したのだからあっぱれだ。

 急成長で階段を駆け上がり世界を驚かせたふたりだが、この時、「リオは全く考えていなかった」(大西さん)。実は、世界選手権の翌月には大西さんが仕事の関係で埼玉から滋賀に引っ越すことが決まっており、高橋選手には新しい競技アシスタントと組んで競技を続けるという選択肢があった。

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